003 吹き輪(ふきわ)<勝山系>
*
姉様新シリーズ「江戸姉様結髪100選」
第三話は「吹き輪」
吹き輪(吹き上げ)は大奥・大名などの武家のお姫様の髪型です
↓こちらは、歌舞伎や芝居などでお馴染みの、典型的なお姫様の髪型です
※画像出典 『文化デジタルライブラリー・国立劇場』より
このかつらは椎茸髱(しいたけたぼ)でなく、普通の髱のような形になっています
時代が下るにつれて、町人風のスタイルが持ち込まれたようです
↓吹き輪のお姫様のイメージはこんな感じ
日本の小さな姉様たち「御殿のお姫様」
*
↓今回ご紹介する吹き輪は、実際結われていたといわれる吹き輪です
派手な飾りがない分、地味に見えます
吹き輪には、上方風、京風、屋敷風、飾りや結い方などもいろいろな種類があり、
身分に応じていろいろ表現して結っていました
地味と言っても、大きな銀の花櫛や梵天(鼓のような飾り)がないだけで、形は上の写真の吹き輪とほぼ同じです
耳じけ(耳の下から下がる垂れ髪)がなく、
結い上げた髪の終わりの毛先を、右斜め後ろに垂らしているのがアクセントになっています
そして飾りは大きな銀の前櫛とか簪ではありません
さすがに豪華で派手すぎて日常生活には向かないでしょう
こんにちまで残っている吹き輪の形や飾りは、歌舞伎や芝居などの影響が強いものと考えます
花笄(はなこうがい)、両天簪(りょうてんかんざし)などと呼ばれる、
笄の両端に飾りが付いている簪(べっ甲ふう)を飾っています
*
花笄(はなこうがい)、両天簪(りょうてんかんざし)とは・・・
↓下の浮世絵の、両サイドの白い花みたいなやつ、花笄の両端でしょう
(アクセサリーめちゃ盛ってますね〜重かっただろうなぁ)
※画像出典 千葉市美術館所蔵『扇持つ女』喜多川歌麿 完成9年頃(1797年)より
*
いくらお姫様でも普段の生活は、現実的にはこのくらいのボリュームのアクセサリーがよいかも知れません
吹き輪は、垂髪を輪にしたものなので垂髪系ともいえるし、
笄を使っているので笄系ともいえます
しかし、結い上げ方法としては勝山系に近いものとなります
参考文献でも分類が難しいものとして扱われていますが、ここでは文献にならい勝山系としました
やはり帯が見えているいつものパターンの方が、江戸姉様らしいですね
立ち姿が粋に見えます
長く豪華な帯に丸ぐけを締めるとお武家の姫君風となります
お姫様や御殿女中は、派手なのは上の打ち掛けで、中の着物はシンプルな色無地などでした
ただし、江戸姉様の場合、基本打ち掛けは着せないので、
デザイン上、お姫様などの着物は打ち掛け風の華やかな色柄の千代紙を用いることもあります
今回は、控えめなヘアスタイルに合わせて裾の方にだけ柄がある友禅の千代紙にしてみました
それにしても、お姫様ってなんでこんなに素敵なのでしょう
万国共通、乙女の永遠の憧れですね
*
参考資料
日本服飾史 https://costume.iz2.or.jp/
風俗博物館 https://www.iz2.or.jp/
江戸の日本髪 https://www.edononihongami.com/
ポーラ文化研究所 https://www.cosmetic-culture.po-holdings.co.jp/
日本髪の歴史 https://www7a.biglobe.ne.jp/~ee-kimono/kami.html
国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/ja/
文化遺産オンライン https://bunka.nii.ac.jp/
文化デジタルライブラリー https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/
千葉市美術館 https://www.ccma-net.jp/
参考文献
『日本髪型 伝統の美 櫛まつり作品集』 京都美容文化クラブ(平成13年(2001年)6月・2刷)
『江戸結髪史』 金沢康隆著 青蛙房刊(昭和46年(1971年)4月2刷)
日本結髪278種 廣瀬辰五郎著 主婦と生活社
結髪全集 人形美術協会
*
2024.04.01
002 葵髱お長下げ(あおいづとおながさげ)<垂髪系> ← 003 吹き輪(ふきわ)<勝山系> → 004 葵髱つぶ髷(あおいづとつぶまげ)<島田系>