002 葵髱お長下げ(あおいづとおながさげ)<垂髪系>

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姉様新シリーズ「江戸姉様結髪100選」

3月1日より始まりました「江戸姉様結髪100選」

徳川時代に流行した女性の髪型は後世の結髪の基礎を築きました
それ以前の女性の髪は、垂髪(すいはつ)で、結わずに後ろに長く垂らしていました
公家のおすべらかしに対して、こちらは武家ふうのおすべらかしといってもよいでしょう

髱が葵の葉に似ているということから、「あおいづと」と呼ばれた形です
髱をペタンコにつぶし、「いちょうとり」といって銀杏の葉のように割り、撫で付けて固めました

途中から、長かもじという長い付け毛を付けています
後ろの髪が身長より長い・・・踏みそう
「髪は女の命」という時代です

※『日本の髪型 伝統の美 櫛まつり作品集』より
あおいづとの形をとくとご覧下さい

左は「片外し(武家の御殿女中)」、中央と右は「つぶ髷(女官見習いの女性など)」

  

※画像出典 日本の髪型 伝統の美 櫛まつり作品集より 

カチカチに固まってますね〜ポマードもワードワックスもビックリ
しかも綺麗な目で流れています
これを作るのは大変だっただろうと思います

↓こちらは「椎茸髱(しいたけたぼ)」
ポニーテール状なので、お長下げの髪型に近いかも知れません

※画像出典 江戸結髪史 金沢康隆著
『都風俗化粧坂伝』所載

あおいづと、という名前が江戸ではいつの間にか「しいたけたぼ」と呼ばれるようになってしまい、
あまりお洒落な名前ではないので、嘆かれていたとか・・・

長谷川平蔵も『ああした女は、根は悪くないものだ。いやなに、きれいな衣装をまとい、椎茸たぼなぞに髪をゆい、
おれなぞを見ても見向きもせぬようなえらい女が、江戸城(
おしろ)の中にうようよと泳いでいるが・・・
あいつらの悪事(わるさ)といきたら、いやはや、ひどいものさ。ところが御城と将軍家の御威光で、悪事が悪事にならぬ。
それにくらべたら、おけいなぞはずっとましだわ』

と、鬼平犯科帳でつぶやいています。
※鬼平犯科帳 第2巻『埋蔵金千両』より

もしかしたら、権力をあやつり贅を尽くした暮らしをしている御殿女中達のことを、江戸の人達は揶揄をこめてそのように呼んだのかも知れません

↓武家風のすべらかしについて
お雛様スタイルのいわゆる「おすべらかし」とはちょっと雰囲気が異なりますね

 

   
※画像出典 江戸の日本髪より

↓葵髱お長下げ(あおいづとおながさげ)
こちらは長かもじを付けたないタイプ「お中」筒状の布でポニーテールを飾っています

江戸姉様は、丸い鬢と髱が一体になっているデザインなので、
御殿女中など、葵髱ふうに見せたい時は、後ろの丸い鬢をつぶします

  

↓こちらはお長

普段はこのようなことはしませんが、割りづとらしく見せるため今回はハサミを入れてみました
ちょっとリアルになりました

掻取(かいどり)は江戸時代の女性の正装で、打ち掛けのこと
袖の無い姉様に打ち掛けを着せるのは大変でしたが、お長下げの女性は打ち掛けを着てないと格好がつきません
できるだけシンプルにそれらしく見えるようにしました

   

やはり帯が見えているいつものパターンが、江戸姉様っぽくていいですね
前回の公家のおすべらかしに続いて、今回も例外です

参考資料

京都宮廷文化研究所 https://kyoto-kyuteibunka.or.jp/
有職文化研究所 https://yuusoku.jp/bunka/
日本服飾史 https://costume.iz2.or.jp/
風俗博物館 https://www.iz2.or.jp/
江戸の日本髪 https://www.edononihongami.com/

ポーラ文化研究所 https://www.cosmetic-culture.po-holdings.co.jp/
日本髪の歴史 https://www7a.biglobe.ne.jp/~ee-kimono/kami.html
国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/ja/

文化遺産オンライン https://bunka.nii.ac.jp/

参考文献

日本髪型 伝統の美 櫛まつり作品集 京都美容文化クラブ(平成13年(2001年)6月・2刷)
江戸結髪史 金沢康隆著 青蛙房刊(昭和46年(1971年)4月2刷)
日本結髪278種 廣瀬辰五郎著 主婦と生活社
結髪全集 人形美術協会


 

2024.03.15

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