38 雛祭り特別編 伊勢の小米雛(三重県)

いつも姉様シリーズをありがとうございます
もうすぐ立春、今回より旧暦の雛祭り(4月3日)前後の期間まで「雛祭り特別編」シリーズをお届けします
古代の雛人形はとても質素な紙製でした
形も、人形と言うよりは<かたしろ>のようなものでした
人のけがれを移して川に流し、災厄を祓ったりしたのが始まりです
現在主流の座った雛人形ではなく、立った姿の立ちびなでした
これは姉様の出発点とも言える形です
姉様と雛人形は区別されていますが、そのルーツは関係ないものとは言い切れません
いにしえの「ひな」の形状から、姉様の創始を彷彿させるものをピックアップして辿って行きたいと思います

ずっと気になっていた小米雛です
伊勢には、室町時代から江戸時代にかけて「小米雛」と呼ばれる小さな雛人形を作る習慣が残っていたそうです
「骨董集」のような古い文献にわずかな記録があるだけです
小米雛について 姉様人形のページ・あねさまの歴史

↓小米雛の画像(2009年二見の雛祭りの様子より)
※画像出典 浜参宮だより〜二見と伊勢とその周辺と〜 美し国三重ひな街道&朔日餅より

米を一粒包んだ白紙を頭とする小米雛の発祥は定かではありません
米を一粒包むから「小米雛」なのか、頭が米粒のように小さいから「小米雛」なのか・・・?
姉様のように長方形の紙を折り畳んで着物を着せます
この小さな紙雛のスタイルは、姉様の原点を見る思いがします

江戸時代の子女向けに、女子の代表的な遊びである雛遊び、七夕祭り、貝合わせ、歌がるたなどについて
その起源や沿革、故実、意義などを解説し、教訓を説いた啓蒙書
『雛あそび乃記貝合乃記(ひいなあそびのきかいあわせのき)』寛延二年(1749年)度会直方(わたらいなおかた)著の中では、
小米雛が災厄を祓うものとして次のように紹介されています

『※雛をちいさく作る事を本義とするは、小米雛の遺風にて少彦名命御神(スクナヒコナミコト)の
いとちゐさくましませる御像をうつし奉り稚児の身にそへもて遊び
もろもろの災害を払い除く折祝となせる神事の物なればおろそかに思うべき事あらず』


本来「雛」は「小さい」の意であり、
少彦名命(すくなひこなのみこと・一寸法師の原型になったとされる)の小さな姿にちなんでおり、
小米雛は、医術で万民を救ったという少彦名命の徳を以て厄難を祓う存在であるとしています
従って雛人形は小さく作るのが正しく、豪華で大きく作るの風潮はおかしいことだと述べ、
雛祭りはそもそも神事であり、女子の戯れごとではなく謹んで祀るべきだとしています

何やら小米雛とは厳かで神様に近い存在らしい・・・
しかも、米一粒を包むというのがお供え的で、ますます神聖な意味合いを兼ねているようです

画像を参考に小米雛を作ってみました

米粒を置く向きによって、タテ型と横型の顔になり雰囲気が変わるので、
私は、お殿様をタテ型にしてお姫様は横型にして作りました
お殿様はかぶりものをつけているように見え、お姫様はびんが横に張り出したおすべらかしのような雰囲気になります

●米を包んでひねる頭の和紙は、厚いとゴワゴワしますので、できるだけ薄いものがよいです
●着物用の和紙は少し厚くても大丈夫です(折り目がつきやすいものがよいでしょう)
●工作用の折り紙などでも代用できますが、ここはぜひ伊勢和紙を使ってみましょう
●女雛は、折り返した重なり部分にほんの少し糊を付けると座りが安定します
●紙の大きさ・形、仕上がりなどは厳密な決まりはありません。おおよその感じで作ってみて下さい
●仕上がりサイズは約2cmくらいです

今年の雛祭りにはぜひ小米雛を飾ってみましょう

2021.02.01

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