75 仙崎の姉様・ねーまー人形(山口県)

 

日本の小さな姉様たちは、山口県にやってきました
山口県の姉様の記録は少ないのですが、仙崎の姉様をご紹介します
山口県長門市仙崎・・・どんなところでしょう
風光明媚な海の風景で有名です
かの詩人・金子みすゞを生んだところでもあります

↓この写真は一度は見たことがありますよね


※画像出典 tripbowl

日本海に面した元乃隅神社(もとのすみじんじゃ)には、123基の鳥居が100メートル以上にわたって並んでいます
2015年にアメリカの放送局CNNが「日本の最も美しい場所31選」にも選出
一躍、日本のインスタ映えスポットとして注目されるようになりました

↓そんな仙崎に伝わっていた姉様
※画像出典 日本郷土人形研究会『姉様』より

 

魚商を営んでいた新町・松原家の婦人によって数十年間作り続けられてい姉様とあります
昭和十年頃に作者が故人となり廃絶しました
この方式の姉様、どこかで見たことがありますよね・・・

↓千葉の姉様 15シュール顔姉様参照


※画像出典 日本郷土人形研究会『姉様』より

↓横浜の姉様 30横浜の姉様参照


※画像出典 日本郷土人形研究会『姉様』より

顔(ゴム印で押したか、印刷したようなもの)が描かれた一枚の紙を鬢に巻き込むスタイル
顔はリアルな描き方(人形っぽくはない)
この三者は似ています
海辺の姉様には共通点があるのでしょうか・・・?
海を通じてどこかで繋がっているに違いありません

↓ねーまー人形

写真左の姉様は東京ふうですが、右の首だけの姉様は仙崎の姉様の名残が見えます
顔の描かれていない姉様もあったのでしょう

 
※画像出典 金子みすゞ記念館ブログより

金子みすゞは、あねさまの詩もいくつか残しています
JULA出版局 金子みすゞ全集より

『らくがき』

雨の音ききながら、
見つめる壁の落書きよ。

いつの日誰が描いたやら
私みたいに拙い画。

薬の香 芬(ふん)とする、
大きな火鉢にひとりいて、
しみじみとながめてる。
お顔だけの
あねさま。

『巡礼』

菜種の花の咲いたころ、
浜街道で行きあった、
巡礼の子はなぜ来ない。

私はわるいことしたの、
あのとき、お金は持ってたの、
あねさま三つも買えるほど。

そのあねさまも買わないで、
思い出しては待ってるに、
秋の日和の街道には、
やんまとんぼのかげばかり。

『けがした指』
白い繃帯(ほうたい)してゐたら、
見てもいたうて、泣きました。
あねさまの帯借りて、

紅い鹿の子でむすんだら
指はかはいい。
お人形。

爪にお顔を描いていたら、
いつか、痛いのわすれてた。

何とも儚げな詩です
金子みすゞも手にしたであろう仙崎の姉様を
いろいろ想像しながら作るのも楽しいです

 

*※参考資料
日本郷土人形研究会『姉様』
金子みすゞ記念館
JULA出版局 金子みすゞ全集

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2022.07.01

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